知的障害の手帳と福祉制度について
知的障害の公的証明である「療育手帳」と、それを取得することによって受けられる福祉制度について
おおまかに書いてみようと思います。
と言いながらまず留意点を述べてしまいますが
知的障害の手帳(以下「療育手帳」)、身体障害や精神障害の手帳と違い
法律による根拠がいまだにない物なので
全国統一基準ではないのですよね、これ。
形式としては「知的障害者福祉法の趣旨を円滑に実行するため、地方自治体が自主的に導入しているもの」みたいな感じです。
www.wikiwand.com自治体(都道府県・政令指定市)によって交付基準も違えば等級も違う、名称だって違う(「愛の手帳」という言葉は首都圏でしか通じませんよ、ということです)
そのため、以下に書く内容とは違う運用をしている自治体もあると思うので
「自分の場合はどうなの?」という点はお住まいの地域の役所に問い合わせてください。
・等級について
だいたい以下の区分があります。
・最重度
・重度
・中度
・軽度
で、ほぼIQの値によって判定されます。
(発達障害や精神障害がある、介護度が高い、といった加算はされないということです)
また、自治体によっては「発達障害」の区分が別に設けられている場合もあります。
等級の表現は「A、B、C」だったり「1度、2度、3度」だったり、色々です。
ちなみに判定を受ける場所は、子どもさん(18歳未満)だとたいてい児童相談所です。
「障害固定」判定が出るまでは、一定期間ごとに切替(再判定)を受ける必要があります。
・で、どんな制度が受けられるのか
一言でいうと、18歳以上か否かで違ってきます。
子どもさんの場合、「保護者に対して」いろいろな制度が適用されることになります。
18歳以上の場合、福祉サービスを受ける「主体となるため」に、障害の公的証明である療育手帳が必要になってきます。
1)子供さんの場合
保護者に対して、「~補助」や「~手当」という名前の補助金や還付金が適用されます。
適用される制度の種類や金額は、療育手帳の等級と保護者の所得額で決まります。
・医療費の補助(※自治体によってはない場合もあるので注意)
保険証を使って医療費を払うときに、保険適用分が払わなくてよかったり還付されたりする制度です。乳幼児医療(こども医療)の対象年齢でなくなっても、療育手帳(だいたい中度以上)を持っていると医療費の補助が受けられる、という制度です。
・税金の控除
保護者(障害のお子さんを扶養している人)が申告した場合、保護者の税金が控除対象になります。
・交通機関・映画館・テーマパーク・その他いろいろな障害者割引
各事業主体(JRとか)がそれぞれ料金設定を決めているサービスです。療育手帳に表示された区分で、割引料金の適用範囲を決めています。
<療育手帳と関係のない制度>
発達障害等で児童精神科などにかかっている場合は、大人が鬱病等で通院する場合に使う「精神通院医療」を適用して医療費の自己負担が下がります。
そのうえで払う医療費は、乳幼児医療助成または療育手帳等による医療費助成(上記)によって減免される、という仕組みです。
・日中一時支援など、福祉事業所が提供しているサービスの一部
自己負担額の上限額を設定するための受給者証が、療育手帳を持っていなくても、医師の診断書などによって交付されます。使いたいサービスによって違うので、役所に問合せましょう。
・特別児童扶養手当(7/17 23時修正)
障害を持つお子さんの保護者への補助金です。療育手帳(あるいは他の手帳)を取得すると案内される場合があります。受かるか否か・金額などの審査は、独自に診断書などで行われます。
※児童手当・児童扶養手当とは別物。(参考)[大分市]児童手当・児童扶養手当・特別児童扶養手当の違いを教えてください
☆子どもさんの知的障害がごく軽度な場合、更新などの手間のわりに受けられる制度が全然ないじゃない、と
メリットを感じない親御さんもいらっしゃると思います。
2)18歳以上の場合
療育手帳を持っている本人に対して、「~補助」や「~手当」という名前の補助金や還付金が適用されます。
適用される制度の種類や金額は、療育手帳の等級と本人(または世帯)の所得額で決まります。
・医療費の補助
1)に同じ
・税金の控除
本人が「自分は療育手帳を持っている」と申告する、または扶養している人が申告した場合、控除対象になります。
・交通機関・映画館・テーマパーク・その他いろいろな障害者割引
1)に同じ
・障害福祉サービス
福祉事業所が提供しているサービスを使いたい(グループホームに住みたい、ホームヘルプを使いたい、就労訓練をしたい、など)場合は、自己負担額の上限額を設定するための受給者証を役所でもらう必要があります。
そのためには、「障害があることの証明書=障害の手帳 を持っている人が」、医師の診断や介護度の判定を受けることになります。
<療育手帳と関係のない制度>
1)に同じ
・障害年金
国民健康保険などが、独自の基準で診断書などに基づいて審査しています。
☆本人が18歳以上になると、療育手帳は何らかの福祉制度につながるためのパスポートになってきます。
役所などに何か問い合わせるときには、「療育手帳を持っている人ですよね」という前提で答えが返ってくることが多い印象です。
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だいたい以上のとおりだと思います。
(「療育手帳」を他の障害手帳に読み替えてもほぼ大丈夫かと思います)
自治体によってあったりなかったりする細かい制度は省略しているつもりですが、他になにかあったかな…
まとめながら思ったのですが
知的障害のあるお子さんは、定期的に(数年に一度程度でもいいので)医師にかかっていたほうがいいのかなと。
18歳をこえて高校を卒業する時、福祉サービスを使いたいなら診断書が必要だし
障害年金の申請にも診断書や初診歴が必要になってくるし
そして、知的障害(や、発達障害)を「医学的に」分類診断できるのは医師だけだからです。
ものすごく蛇足ですが
療育手帳は本人証明として使えますが、「写真が古いけどほんとに本人ですか?って聞かれた!!」みたいに言う人をたまにお見掛けしまして。
写真が古かったら新しいのに作り直してもらえるはずなんで
新しい写真を用意して役所に聞いてみてはいかがでしょうか。