【タリウム事件】加害者はモンスターなのか?
殺人欲求から同級生に毒物を飲ませて障害をおわせたという事件の
加害者と被害者の陳述に対し、いくつかのコメントを見たのですが
加害者はいずれも「理解できない」「反省してない」「謝罪の仕方がわからないとか異常」「キチガイは隔離するしかない」などと評されていました。
けれど彼女は評価されているように「理解できないモンスター」なのか、どうにかして解説できないかを
ASD的な視点から書いてみる試みです。
※加害者は障害特性ゆえ無罪である、等と主張する意図はありません
※被告人質問における陳述は心情を隠さず述べているという前提に立つので、書かれていない発言等があった場合は解釈が変わると思います
まず、この加害者の「異常」な点として
1 他害欲求が人よりも遥かに高い という点があると思うのですが
他害欲求の高さについてはASD特性的視点からは説明不可能だと思います。
酒鬼薔薇事件の加害者なんかと同様ではないかと思うのですが
「生き物がどんなふうに壊れるのかを見たい」という欲求を異常なレベルで持っている人間は、一定数存在する、と認めた上で
その欲求を発現させない、実行に移さないように教育するしかないのだろうと思います。
この加害者の場合、「実行したらどうなるか」というストップがかからなかった、という点については「想像力の欠如」などと言い表してもいいように思います。
もう一つ「異常」な点は、おおざっぱにまとめると
2 言葉を「主観的事実の記述」にしか使えず、他の人も同様だと思っている
という点だろうと思います。
こちらはASD的視点から読み解けるのではないかと感じます。
>社会復帰後もできればタリウムは買わないようにしたい。実際に買うかどうかは分からない。
この言葉を「反省していないことの表れ」等と受止め、憤っているコメントをいくつか見かけたのですが
この加害者は「薬品を買いません!」と宣言する場面だと認識せず、「100%確実と思われる事実」を述べているつもりなのだと思います。
「劇薬を買わないでいようという意思はあるが、実際に薬品を目の前にしたら入手したくなる可能性はある、と自分を分析している」のでしょう。
>謝罪したい気持ちはどの被害者に対してもあるが、謝罪の仕方がまだ分からない。(略)反省したいが、反省が何かがまだ分からない
「反省し、謝罪したい」と思っているのは本当なのだと思います。
それは、逮捕以降に「自分の感覚は他人と違う」と学習した結果、「自分は加害者であるから反省し、被害者に謝罪すべきである」という結論を得たからのように思えます。
けれど、形ばかりの謝罪の言葉を述べても無意味である、ということも同時に学習しており
何と言えば「真剣な謝罪」である、と被害者に認めてもらえるのかがわからないのでしょう。
おそらく被害者が「このような行動を示せば謝罪と認める」と言えば、彼女は真摯にそれを実行するのだろうと思います。
けれど、被害者側も傍聴者も「謝罪や反省の仕方がわからないなんてありえない」とごく自然に思っているので
加害者はしごく真面目に「どんな言動が真剣な謝罪ですか?」と問い返し、煽りだ居直りだと受け取られて更なる怒りをかう
そんな断絶があるように思います。
>仮に私が誰かにタリウムを飲まされたとして「どこで入手したんだろう」と思っただろう
被害者は「もし自分が殺されたらどう思うのか」と憤っていますが
おそらくこの加害者は、自分が殺されても「この薬物は何だろう」と思うのだろうな、と思います。
「実験対象」を自分にしない辺り、その行為になんらかの恐怖や危険を感じているのでしょうが
その感情が言語化されていない。
おそらくあまりに未分化で、自分でも認知していないから。
だから、他人にとっても感情の感じ方はそんなもんだろう、と類推し
大いに誤っている、という状況だろうと推測します。
まとめると、この加害者は
(彼女にとっての)事実を包み隠さず述べている のだと思います。
そして、裁かれる過程で自分がとるべき言動は、教えられないとわからないのだろうと思います。教えられればそうする意思もあるのでしょう。
一方で被害者側や傍観者である我々が、彼女の言を
反省していない、居直っている、などと受け取るのは
(言い方は悪いですが)勝手にこちらの解釈をあてはめて勝手に憤っているようなものなのでしょう。
「通常と全く違う行動原理を持っており、継続的に更生教育が必要な人」は、やはり「理解不可能なモンスター」なのでしょうか?
最後になりましたが、この事件・加害者の言葉に関する意見や解釈をご教示くださった方、ありがとうございます。